故郷での迫害を逃れ、小学生のころに日本へやってきた
オザン(18歳)とラマザン(19歳)
二人は難民申請を続けるトルコ国籍のクルド人。
入管の収容を一旦解除される「仮放免許可書」を持つものの、
許されているのは「ただ、いること」。
立場は非正規滞在者で、住民票もなく、
自由に移動することも、働くこともできない。
また社会の無理解によって教育の機会からも遠ざけられている。
いつ収容されるか分からないという不安を常に感じながら、
それでも夢を抱き、将来を思い描く。
2019年3月、東京入管で事件が起きた。長期収容されていたラマザンの叔父メメット(38歳)が極度の体調不良を訴え家族らが救急車を呼んだ。しかし、入管は2度にわたり救急車を追い返した。
メメットが病院に搬送されたのは30時間後のことだった。
在留資格を求める声に、ある入管職員が嘲笑混じりに吐き捨てた。“帰ればいいんだよ。他の国行ってよ”
5年以上の取材を経て描かれるオザンとラマザンの青春と「日常」。
そこから浮かび上がるのは、救いを求め懸命に生きようとする人びとに対するこの国の差別的な仕打ちだ。
かれらの希望を奪っているのは誰か? 救えるのは誰か?
問われているのは、スクリーンを見つめる私たちだ。
2021年、入管法「改正」案が閣議決定され、審議の末に成立は見送りとなった。しかし、私には、今も日本が難民を排除する方向に向かっているとしか思えない。
この原稿を書いている今、ニュースでは収容中に死亡したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんの続報が伝えられている。
だが、なぜ彼女が亡くならねばならなかったのかについては、未だ明らかにされていない。
今回の「改正」案が見送られたからといって、この映画に出演してくれた人たちの置かれている過酷な状況は、何ひとつ変わらない。
今回の映画公開にいたるまでには約5年かかった。
少しでも多くの人に、日本で生きるクルド人について知ってもらいたいと思っている。
1980年東京都生まれ。2006年、ドキュメンタリージャパンに入社。東部紛争下のウクライナで徴兵制度に葛藤する若者たちを追った「銃は取るべきか」(16・NHK BS1)や在日シリア人難民の家族を1年間記録した「となりのシリア人」(16・日本テレビ)を制作。本作『東京クルド』(21)の短編版『TOKYO KURDS/東京クルド』(17・20分)で、Tokyo Docsショートドキュメンタリー・ショーケース(17)優秀賞、Hot Docsカナダ国際ドキュメンタリー映画祭(18)の正式招待作品に選出。また、ドホーク国際映画祭(18)にて上映、DMZ国際ドキュメンタリー映画祭(19)コンペティション部門にノミネートされた。テレビ版「TOKYO KURDS/東京クルド」(18・テレビ朝日・30分)は、ギャラクシー賞(18)選奨、ATP賞テレビグランプリ(18)奨励賞。近作に、「村本大輔はなぜテレビから消えたのか?」(21・BS12)。
TVプロデューサー、国際共同製作プロデューサー。2002年よりドキュメンタリージャパン代表を10年間務める。テレビドキュメンタリーのディレクター、プロデューサーとしての参加作品は、「赤道物語」(90・テレビ朝日・ATP賞グランプリ)、「忘れられた戦場〜アフガニスタン・カブールの冬〜」(96・NHKスペシャル)、「アンデスに響く黒人音楽~南米大陸・ルーツを探す旅~」(04・NHK BS2・ATP賞最優秀賞)、「ディリアニーズ〜ハイチ囚われの子どもたち〜」(11・NHK BS1・アジアテレビ賞奨励賞)、テレビ版「TOKYO KURDS/東京クルド」(18・テレビ朝日・ギャラクシー賞選奨・30分)など。国際共同製作のためのピッチング・セッション、Tokyo Docsにおいてアジア部門「Colors of Asia」の総合プロデューサーを担当、フィリピンとの共同製作『SUNDAY CINDERELLA』(15)を手がける。本作『東京クルド』(21)は初の映画プロデュース作品。
プロデューサー、海外セールス、アーティクルフィルムズ代表。日本で唯一のドキュメンタリー・海外セールス会社として、カンヌ映画祭併設マーケットのドキュメンタリー・コーナーにて、2018年から3年連続で世界10社の出展社のひとつに選ばれている。コ・プロデューサーとして参加した小谷忠典監督『フリーダ・カーロの遺品-石内都、織るように』(15)は、韓国チョンジュ国際映画祭を皮切りにHOTDOCS国際映画祭など多数の国際映画祭にて上映。プロデューサー作品として小谷忠典監督『ORIGAMI』、歌川達人監督『URAYASU』、日向史有監督『MURAMOTO』の公開が控える。海外セールス担当作品に小田香監督『セノーテ』(19)、小森はるか+瀬尾夏美『二重のまち/交代地のうたを編む』(19)など。
1983年兵庫県生まれ。自由学園高等科卒業、是枝裕和監督『歩いても 歩いても』(08)(撮影:山崎裕氏)に撮影助手として参加。2008年(株)いちまるよんに入社、「ホテルの窓から ~カナダ・プリンスエドワード島編~」(14・BS日テレ)でデビュー。20年よりフリーランスとなる。主な撮影作品に「ガイアの夜明け ~タクシー頂上決戦~」(15・テレビ東京)、「情熱大陸 ~橋本美穂~」(17・MBS)、「BS1スペシャル 少女が神になるとき~クマリ ネパールの祈りとともに~」(18・NHK)、「証言記録 東日本大震災第89回 心の傷に寄り添う 〜訪問型ケアの現場から〜」(20・NHK)、「地球タクシー ~2020初夏の東京を走る~」(20・NHK)など。本作『東京クルド』(21)は短編版『TOKYO KURDS/東京クルド』(17・20分)制作スタート時から撮影を担当。
1973年東京都生まれ。大学在学中よりBOX OFFICEの映像制作部でテレビ番組、映画予告編制作を担当。99年よりフリーランスとなり、現在はドキュメンタリー映画と予告編の編集を中心に活動。編集を担当した主な映画作品に、佐藤真監督『花子』(01)、『阿賀の記憶』(04)、『エドワード・サイード OUT OF PLACE』(05)、ジャン・ユンカーマン監督『チョムスキー9.11 Power and Terror』(02)、小林茂監督『わたしの季節』(04)、『チョコラ!』(08)、『風の波紋』(15)、真鍋俊永監督『みんなの学校』(14/編集協力)、小森はるか監督『息の跡』(17)、戸田ひかる監督『愛と法』(17)、原一男監督『ニッポン国VS泉南石綿村』(17)、『水俣曼荼羅』(20)など。
地域 | 劇場名 | 電話番号 | 公開日 |
北海道札幌市 | シアターキノ | 011-231-9355 | <上映終了> 10月2日(土)~10月8日(金) |
備考: | |||
北海道苫小牧市 | シネマトーラス | 0144-37-8182 | <上映終了> 2022年10月8日(土)~10月14日(金) |
備考:*月曜休館 | |||
秋田県秋田市 | アウトクロップ・シネマ | 080-3710-3184 | <上映終了> 2022年3月12日(土)・13日(日) |
備考: | |||
宮城県仙台市 | チネ・ラヴィータ | 022-299-5555 | <上映終了> 9月10日(金)~9月23日(木) |
備考: | |||
福島県福島市 | フォーラム福島 | 024-533-1717 | <上映終了> 10月8日(金)〜10月14日(木) |
備考: | |||
福島県いわき市 | 湯本駅前ミニシアターkuramoto | 080-2109-6385 | <上映終了> 2022年3/11(金)〜3/13(日)、3/15(火)〜3/20(日) |
★ 「いわきポレポレ映画祭」での上映 |
地域 | 劇場名 | 電話番号 | 公開日 |
東京都渋谷区 | シアター・イメージフォーラム | 03-5766-0114 | <上映終了> 7月10日(土)〜10月1日(金) |
備考: | |||
東京都世田谷区 | 下高井戸シネマ | 03-3328-1008 | <上映終了> 2022年1月22日(土)〜1月28日(金)/span> |
備考: | |||
東京都豊島区 | シネマハウス大塚 | 問合:ミカタ・エンタテインメント | <上映終了> 11月27日(土)~12月3日(金) *12月1日(水)休映予定 Mシネマ第20弾 “移民難民”映画特集上映 inシネマハウス大塚 |
備考: | |||
神奈川県横浜市 | 横浜 シネマ・ジャック&ベティ | 045-243-9800 | <上映終了> 1月23日(日)・24日(月) 【よこはま若葉町多文化映画祭2021にて上映】 |
備考: | |||
千葉県柏市 | キネマ旬報シアター | 04-7141-7238 | <上映終了> 10月9日(土)〜10月22日(金) |
備考: | |||
埼玉県川口市 | イオンシネマ川口 | 048-299-3450(音声自動ダイヤル) | <上映終了> 7月16日(金)〜7月29日(木) |
備考: | |||
埼玉県川越市 | 川越スカラ座 | 049-223-0733 | <上映終了> 9月4日(土)~9月17日(金) |
備考:*火・水曜定休日 | |||
埼玉県深谷市 | 深谷シネマ | 048-551-4592 | <上映終了> 10月17日(日)〜10月30日(土) |
備考:*火曜定休日 | |||
神奈川県厚木市 | あつぎのえいがかんkiki | 046-240-0600 | <上映終了> 10月2日(土)~10月15日(金) |
備考: | |||
神奈川県逗子市 | シネマアミーゴ | 046-873-5643 | <上映終了> 11月14日(日)~11月27日(土) |
備考: | |||
群馬県高崎市 | シネマテークたかさき | 027-325-1744 | <上映終了> 7月31日(土)~8月6日(金) |
備考: |
地域 | 劇場名 | 電話番号 | 公開日 |
愛知県名古屋市 | 名古屋シネマテーク | 052-733-3959 | <上映終了> 7月31日(土)~8月20日(金) |
備考: | |||
愛知県刈谷市 | 刈谷日劇 | 0566-23-0624 | <上映終了> 10月8日(金)〜10月21日(木) |
備考: | |||
新潟県上越市 | 高田世界館 | 025-520-7626 | <上映終了> 12月4日(土)10:00~/6日(月)12:45~/10日(金)13:30~ 【「難民映画特集」にて再上映】 |
備考:*火曜定休日 上映詳細はこちら | |||
新潟県新潟市 | シネ・ウインド | 025-243-5530 | <上映終了> 9月4日(土)~9月10日(金) |
備考:*火曜定休日 | |||
富山県富山市 | ほとり座 | 076-422-0821 | <上映終了> 10月9日(土)~10月15日(金) |
備考: | |||
富山県高岡市 | ダフレンズ×ほとり座 | 0766-24-9229 | <上映終了> 11月6日(土)〜11月12日(金) |
備考: | |||
石川県金沢市 | シネモンド | 076-220-5007 | <上映終了> 7月31日(土)~8月6日(金) |
備考: | |||
長野県長野市 | 長野相生座・ロキシー | 026-232-3016 | <上映終了> 9月17日(金)~9月30日(木) |
備考: | |||
長野県上田市 | 上田映劇 | 0268-22-0269 | <上映終了> 11月6日(土)〜11月19日(金) |
備考: | |||
長野県松本市 | 松本CINEMAセレクト | 0263-98-4928 | <上映終了> 9月5日(日)のみ |
備考: |
地域 | 劇場名 | 電話番号 | 公開日 |
大阪府大阪市 | 第七藝術劇場 | 06-6302-2073 | <上映終了> 7月10日(土)~8月6日(金) |
備考: | |||
大阪府大阪市 | シアターセブン | 06-4862-7733 | <上映終了> 12月7日(火)/11日(土)/17日(金) 【よどがわダイバーシティ映画祭2021〉にて再上映】 |
上映詳細はこちら | |||
京都府京都市 | 出町座 | 075-203-9862 | <上映終了> 7月23日(金祝)~8月19日(木) |
備考: | |||
兵庫県神戸市 | 元町映画館 | 078-366-2636 | <上映終了> 7月24日(土)〜8月6日(金) |
◉7/24(土)に開催した、日向史有監督×守口静香さん(RAFIQ運営委員)トークレポートは【こちら】 | |||
兵庫県宝塚市 | シネ・ピピア | 0797-87-2261(音声自動ダイヤル) | <上映終了> 10月29日(金)〜11月4日(木) |
備考: | |||
兵庫県豊岡市 | 豊岡劇場 | 0796-34-6256 | <上映終了> 10月29日(金)〜11月4日(木) |
備考:*水曜定休日 | |||
兵庫県洲本市(淡路島) | 洲本オリオン | 0799-22-0265 | <上映終了> 11月19日(金)〜11月25日(木) |
※シネマキャロット主催 |
地域 | 劇場名 | 電話番号 | 公開日 |
岡山県岡山市 | シネマ・クレール | 086-231-0019 | <上映終了> 9月24日(金)~9月30日(木) |
備考: | |||
広島県広島市 | 横川シネマ | 082-231-1001 | <上映終了> 8月8日(日)~8月31日(火) |
備考: | |||
愛媛県松山市 | シネマルナティック | 089-933-9240 | <上映終了> 9月25日(土)〜10月1日(金) |
備考: 火曜休映 |
地域 | 劇場名 | 電話番号 | 公開日 |
福岡県福岡市 | 福岡中洲 大洋映画劇場 | 092-291-4058 | <上映終了> 12月3日(金)〜12月9日(木) |
※KBCシネマから上映劇場が変更になりました | |||
大分県大分市 | シネマ5 | 097-536-4512 | <上映終了> 8月7日(土)~8月13日(金) |
備考: | |||
熊本県熊本市 | デンキカン | 096-352-2121 | <上映終了> 9月3日(金)〜9月9日(木) |
備考: | |||
宮崎県宮崎市 | 宮崎キネマ館 | 0985-28-1162 | <上映終了> 10月1日(金)〜10月14日(木) |
備考: | |||
鹿児島県鹿児島市 | ガーデンズシネマ | 099-222-8746 | <上映終了> 10月2日(土)〜10月7日(木) |
備考:*10/5㊋休館日 | |||
沖縄県那覇市 | 桜坂劇場 | 098-860-9555 | <上映終了> 9月13日(月)〜9月24日(金) |
備考:沖縄県からの休業要請に伴い、9/18㊏・9/19㊐・9/20㊊(祝)・9/23㊍(祝)休館 | |||
沖縄県沖縄市 | シアタードーナツ・オキナワ | 070-5401-1072 | <上映終了> 11月21日(日)〜12月16日(木) |
備考: |
コメント
COMMENTS
さっさと他の国に行けって?
行けるものなら、とっくにそうするよ。
いっそ、たどり着かなければよかった。
――これ以上、この国に、絶望させられませんように。
今日もきっと、誰かが必死に耐えている。
こんな日本で、私たちはいいの?
知らないふりは、もうできない。
温又柔小説家
これはあなたと僕の、我が身かわいさの問題だ。
国際的な「難民条約」に立って日本を非難するのは思考停止だ。それは「ルールだから」とクルド人たちの就労を認めない入管職員と変わらない。彼らは個人的な恨みで突き放しているのか?この国を、このルールを作っているのは僕たち“国民”だ。そして「他の国に行ってよ、他の国」という嘲笑は他でもなく、あなたと僕から漏れ出た嘲笑なのだ。
上出遼平テレビ東京『ハイパーハードボイルドグルメリポート』プロデューサー
映画を見終わると、あなたの瞳の中に二人の青年が棲みはじめるだろう。暗闇の中で「将来」という言葉を虚しく噛み締めるしかないその顔、叫ぶこともできないその声にあなたの人生の小さな場所を与える。それが始まりだ。まだ映画は終わらない。絶望の淵を彷徨う彼らの未来はまだ閉じられてはいない。映画の結末を作るのは私たちなのである。
諏訪敦彦映画監督
八方塞がりの絶望的な状況においても、僅かな希望に向かって懸命に日々を過ごしている2人のクルド人青年。
そんな2人に向けて、入管職員が放った言葉が耳から離れない。
「帰ればいいんだよ。他の国行ってよ他の国」
この言葉が象徴するのは、入管の「排除の体質」だ。入管が排除の対象にしている「人」がどのような存在なのか。この作品を通じて多くの人に見て、知ってもらいたい。
せやろがいおじさん(えもやん)お笑い芸人・YouTuber
「仮放免許可書」——入管によるたった一片の紙切れが、若者の日常生活のあらゆる側面を規定し、彼らの抱く夢、淡い期待をも蝕んでいく。彼らを追い詰めることで、この国は、そして「私たち」は、何を守ろうとしているのか。
髙谷幸東京大学教員
差別と無理解、入管行政の厚い壁…。戸惑いと絶望の中でもなお、生きる希望とクルドの誇りを捨てない若い二人。オザンとラマザン。その問いかけは私たちに突きつけられた刃のようだ。
鴇沢哲雄フリーライター/「日本で生きるクルド人」
18歳と19歳。対称的な二人の、けれど等しく理不尽な現在に心を掻き乱される。摘み取ろうとしても、踏み潰そうとしても、明日に向かって伸びていく生のエネルギーは壊せない。彼らの未来を奪おうとする日本という国の試みは、ただひたすら残酷なだけで、そもそもの始めから失敗しているように見える。彼らに在留資格を。日本で生きていく未来を。もし、それができないのなら、滅びるのは彼らではなく、この日本だ。
中島京子小説家
ラマザンとオザン。ふたりのクルド人の若者は、前に進んだかと思えばすぐに壁にぶつかる。彼らを立ち止まらせるのはこの国の矛盾だ。映画を見て動くべきは自分たちだと思った。
西森路代ライター
今ここで自由を求めて格闘する2人の姿から見えてくる、この社会の不正義とこの世界の不条理。その壮絶に重ねる傲慢を恥じつつも共振してしまったのは、在留資格はあっても国のない私にも身に覚えのある理不尽さと青春の痛みがそこにあったから。
彼らも、そして大人になった私も、今ここを生きている。
今ここに生きるすべての人が見るべき、痛切な青春映画。
ハン・トンヒョン日本映画大学教員
人間は生まれれば生きる。その権利に国籍や民族は関係ない。しかし、入管は生きることを許さない。いつから入管は、人から生きる権利を取り上げるような異常な組織になったのだろう。その暴力の感触を、この映画から感じ取ってほしい。この暴力を止められるのは、私たちの関心なのだから。
星野智幸小説家
目の前にはレインボーブリッジ。現場は港区。東京のど真ん中で起きている非人道行為に私はなぜそれまで気がつかなかったか。薄々は知っていた。それでも目を逸らしてきた。詳しく知ろうともしなかった。分断はそうした無知、無関心、見て見ぬ振りが引き起こす。そろそろ自覚したほうがいい。この映画を見て、この事実を知って、それでも動くことができなければ、私は加害者の一人になるのだ。私は選択を迫られている。
堀潤ジャーナリスト/映画監督
まだ若いオザンに入管職員は「他国へ行ってよ。帰ってよ」と平然と刃を突きつける。これが彼らの日常であり、入管対応の現実であることに怒りと絶望しかない。現在を生きる全ての日本人が観るべきドキュメンタリーだ。
望月衣塑子「東京新聞」記者
入管が作り出す境界線は、一人ひとりの言葉と振る舞い、差別と遵法意識をつたって社会の隅々まで浸透し、かれらの未来に何度も何度もふたをする。在留資格を持たずに育った二人の青年。その心を折り続けてきたのは一体誰なのか。この映画を見れば、目を背けなければ、きっとわかるはずだ。
望月優大ライター
帰ればいいんだよ。他の国行ってよ。入管職員が彼らに浴びせる言葉を聞きながら、僕はこの国に生まれたことが本当に恥ずかしい。苦しい。腹立たしい。観終えて思う。日本国民の半分が、いや10分の1が、いや100分の1でもいい、とにかくこの映画を観てオザンとラマザンの夢と希望を打ち砕く冷酷さを目撃したのなら、きっと気づくはずだ。入管職員は日本国籍を持つ自分たち自身でもあるのだと。
森達也映画監督・作家
名古屋の入管施設で亡くなったスリランカ人女性・ウィシュマさんの顔と名前を憶えている人は多いだろう。ならば、この映画に現れるクルド人のオザンとラマザン、そしてメメットの顔と名前も憶えておいてほしい。彼らが日本でどんな扱いを受けてきたのか、彼らがこれから日本でどう生きていけるか。入管の中も外も、日本社会とつながっている。
綿井健陽ジャーナリスト・映画監督